Furoshiki Mignon

認知症の人にふろしきを教えました

風呂敷講座でのお話。
来てくれたけど、畳んだままで全く風呂敷を広げてくれないおじい様がいました。
腕を組んでむすっとして。ちょっと怖かった。やらないなら来なくてよくない?とかわたしは思っていました。
「風呂敷をひろげてみてもらえますか?」
とはなしかけました。

すると、
「僕、認知症やから教えてもらっても忘れるねん。すまんな、、」
と言われました。
とっさに出た言葉は、
「私だって覚えてないんだから!全然大丈夫!」
とか言って。先生なのにありえないよね。励ましたつもりです。

 

「せっかく来たんだし、サボらず手を動かして。思いつきで好きなようにやってください」
と言いました。

そしたら、その方は、「すいませんすいません。怒られちゃったよ〜」

とか周りの人に言いながら、気がついたら誰よりもめきめき上達してしまった。

みんなでバッグをつくったんだけど、
その人はマニアックなアレンジをして私もやったことないようなバッグができた。

「俺才能あるんちゃう〜?」
とか。もうわたしも思い出せないようなジョークも言ってみんなを笑わせてくれて。
風呂敷で帽子を作った時には
「僕と写真撮りたい人〜?」
とか言って、ごきげんで帰っていった。

 

そしたらまた次の風呂敷講座にもきてくれた。また風呂敷をさわってくれなかった。
「一人だけサボるのはなしです!!」
私はまた人生の大先輩を叱る。
でもまた「しょうがねえな〜」とか言いながら、違う独創的なバッグができた。

 

風呂敷も、人の心も、ほどいてからが始まりだな。
何回忘れても、みかんの剥き方は覚えているように、風呂敷の結び方が身につけば嬉しいな。

認知症は、本人もきっとつらい。私のおじいちゃん見ていてそうでした。

 

それに1週間のクルーズに100万円くらいかけてこられる人だもん。

長年勤めて、たくさんの部下がいて、孫とかもいて、きっと慕われていたのかな。

でもこうやって出来ないことがでてくる。プライドが傷つくと思う。

だから、「あっ認知症なんですね、じゃあ見ていてできることをやってください、、」みたいに言っちゃったら、

「できないことが増えた」と、余計に傷付けたと思うんです。

私はふろしきの先生です。ふろしき広げんかい!というきもちで、みんなに、平等です。
たとえ、手がないお客様が来られたら、来てくれたんだから、私はどうしたら良いか考えるよ。

その人が結べなくても良いもんね。

その人が隣の人に、口頭で結び方を説明して理想の結びができるように教えることだってできる。
それに目に見えない結びだってあるもんね。
風呂敷に携わるかぎり、わたしは出来ないと言わないでいたい。

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