Furoshiki Mignon

どうして風呂敷(ふろしき)と呼ぶのか

 

 

風呂敷(ふろしき)という言葉

風呂敷という言葉を知らない日本人はほぼいないだろう。使ったことのない子どもでも、漫画やアニメの泥棒や家出で背負っているあの布と分かるはず。響きとしては、下敷きや中敷きのように敷くものと想像でき、風呂もよく知った言葉なので、初めて聞いても馴染みやすい。

 

 

 

風呂敷(ふろしき)ができるまでは

 

かつて風呂敷は「平包み」と呼ばれていたようだ。これもシンプルな言葉で、「平たい包み布」というわけだ。興味深いのは、物も用途も同一(ものを包み運ぶ布)ながら、風呂敷は敷き布としてほどいてある状態、平包みは包み布で結んである状態で名付けている。ほどかなければ結べないので、どの過程を拾い上げたかに過ぎないが、平包みは包む用途を予測させるのに対し、風呂敷はここから何にでも変化できる多目的性を秘めている。

 

 

 

「風呂」に「敷く」の違和感

 

では次に、風呂問題だ。由来は諸説あるが、ピンと来ない部分もある。現代では、風呂場の中やサウナの腰かけ、脱衣所の床にも、風呂敷を敷いてはいない。それがタオルに代わったなら、昔なら手ぬぐいだろうし、湿った風呂敷でまた何かを包むのも実感が湧かない。濡れると風呂敷は結びにくい。

 

「風呂に敷くもの」と考えると、分からなくなるのではないか。もし自分が今日江戸時代人で、一日の汗を流しに銭湯へ行くならどうするだろうか。汗ばんだ着物を再び着たくないので、着替えの浴衣を携える。まず、それを包んでいくのに風呂敷が要る。脱衣所には、江戸時代も棚やカゴがあるが、着替えを包んだ風呂敷のお蔭で、誰の持ち物か分かりやすい。

 

 

 

「敷き物」ではなく、包み布としての役割

 

脱いだ着物は脇へ置くが、財布なんかは包みの中にしまう。自分が結んだ風呂敷包みは一種の結界となり、鍵として中身を守る。風呂から上がり浴衣に着替えたら、空いた風呂敷に前の着物をつつむ。慣れていれば、床に広げなくても棚やカゴの上でできる。このように、お風呂のどこかに敷かなくちゃ、と探さなくても「風呂へ持っていく敷きもの(布)」ととらえれば、現代でもそのまま役に立つ。

 

 

お風呂へ行くときは、風呂敷に包むしかなかったのではないか

 

風呂敷の名前の由来はいまだ定かではない。物を包み運ぶあらゆる場面で使われ、お風呂以外の用途がはるかに多いのに、どうして風呂なのか。江戸ッ子は、旅や行商、使いの者をのぞいては手ぶらが多い(ちょっとしたものは袖や帯、手ぬぐいに差す)。ただ、銭湯へ行くときばかりは着替えを包むのに風呂敷が必需品で、やっぱり風呂なのかもと空想した。ちなみに江戸ッ子は早口のため「ふるしき」と言う。

 

風呂敷は自分にあったアレンジを工夫するもの。名前の由来も独自の解釈を楽しんでみてはいかがだろう。

「お風呂のように温かく包みこんでくれる敷きもの」なのかもしれない。

 

written by Furoshiki Mignon

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