なぜ風呂敷の結びには2種類しかないのか?
「真結び」と「ひとつ結び」
ひもやロープには100を超える結び目の種類があるが、風呂敷には2種類しかない。
「真結び」と「ひとつ結び」だけなのはなぜだろう?
結び目は、中身を包み込むために。
どちらも物をまとめ運ぶのに使われる。風呂敷は、中身と触れる面積が広いほどずれにくくなり、負担も分散して安定する。
一方でひもは、巻く回数やルートにより接触面をふやす。そして一連の流れを結び目ととらえるため、状況の数だけ種類ができる。
ひもは端と端とを手をつなぐように結ぶのに対し、風呂敷のはハグと呼びたい。風呂敷には面積があるので、全身で包みこむことができるからだ。ひもも風呂敷も、結び目はその形状を保てればよい。複雑にすると布をとられて容量を狭めるし、ほどきにくくなって使いまわしづらくなる。
真結びと風呂敷
風呂敷における2種の結び目のうち、ひとつ結びは布を寄せ、使わない角をまとめる。
最も使うのは真結びで、固結びとも呼ばれる。
レジ袋や細いひもを真結びすると、解けなくなるほど固くなるが、風呂敷の角は元が広く、結んで重なった部分がクッションとなり適度に締まる。
先は細くて小さく結べるし、ほどくときは引っかからずスルリ。
真結びは風呂敷と相性がよい。
風呂敷は人である。
いちまいの風呂敷を体と表現すると、その角は手である。
風呂敷は体(布全体)で物を支えるため、添える手(角)はシンプルな結び目に落ち着いたと想像できる。
そこには複雑なアイデアは必要ない。風呂敷の4つの手は両手(真結び)か片手(ひとつ結び)を添える程度で済むのだ。
体で包み込み、両手をつなぐ。
中身はその身を委ねて、何もしないとくたっとなるが、
四つの手(角)はしっかりと中身をハグをして支える。そして持ち主にとってよい長さに、結び目を調整することができる。
「風呂敷で包む」などと表現されることが多いが、温かく包み込まれているのは私たちの方なのかもしれない。
そのようなことを考えながら、一度結んでみてほしい。
真結びとひとつ結び。
2種類しかないシンプルな結びから創造できるものは、無限にある。
人の心でさえも、結びつなげることができるのだ。
written by Furoshiki Mignon