唐草模様は泥棒ふろしき?
泥棒を連想させる、唐草模様の風呂敷
風呂敷といえば唐草模様(文様)が定番だ。
縦横無尽に伸びゆくツルは無限の繁栄を表し、何でも包みこむ風呂敷とも親和性がある。
ところが、この柄からは泥棒が連想されやすい。
実際にそんな盗っ人を見たことがなくても、深く刻みこまれているのだ。
唐草模様(アラベスク)とは
唐草模様(アラベスク)は太古のエジプトやメソポタミアから存在しているといわれ、シルクロード経由で日本へと伝わった。唐草という品種は無く、植物やデザインも様々だ。唐は舶来の意味だろう。
外国の植物といいたいが、日本にも似たような草木はあるので「海外から来た、植物文様」ととらえてみたい。
種類は忍冬(スイカズラ)やツタともいわれ、実際に伝統的に存在しているモチーフである。
しかし、現在の日本でよく見る唐草模様は、先を巻いたツルのみでほぼ構成されている。
粋ではあるが、一体何の草なのかと、よく見ると豆が見つかる。
前述の二種とも異なり、日本の唐草(ジャパニーズアラベスク)はマメ科のようだ。
そこへ、別種ながら桐の花などがあしらわれている意匠もある。
豆の種類までは設定していないだろうが、春に身近に会えるカラスノエンドウの先端を見れば、まさにクルンと唐草の一端が垣間見える。
みんなが持っていた、泥棒(唐草模様)ふろしき
そんな唐草の風呂敷は、江戸時代にもあったろうが、機械織りの普及した明治時代以降、大正から昭和の中ころまで量産され愛用された。
どの家庭にもあるから泥棒も怪しまれずに使えたし、風呂敷自体も侵入した家のタンスから盗んだとささやかれる。
だけどもし自分が泥棒なら、使い慣れたものを必携するだろう。
よその家で風呂敷を見つけている場合ではないはずだ。
泥棒のふろしきはゆるキャラ!?
よくある模様だから目立たないという理由も疑問で、その時代ならどんな風呂敷でも日常風景だ。
泥棒に唐草の風呂敷というのは、親しみやすいキャラクターデザインとしての選択だ。
本気で顔を隠すなら忍びのように目だけを出すだろうが、手ぬぐいを鼻の下でポップに結んじゃっている。
象徴としての泥棒イメージは漫画や風刺画に使われたため、悲哀だけでなくキャッチーな愛嬌が必要だったのだ。
唐草風呂敷の泥棒は、半分フィクションのゆるキャラといえよう。
これからは、唐草の風呂敷を観念の世界から解放しよう。
定番もよいが、地やツルの色を変えるだけでも印象はがらっと変わる。
すてきなあなたが実際につかうことによって、泥棒の専売特許ではなくなる。
否、変幻自在に風呂敷を魅せるあなた自身が、みんなのハートどろぼうとなるのだ。
written by Furoshiki Mignon