Furoshiki Mignon

着物の反物の歴史と風呂敷

風呂敷は、古くから日本の生活に深く根付いている伝統的な布であり、その歴史には長いものがあります。特に「反物をつなげて作られた風呂敷」というのは、日本独自のものとして非常に興味深い点です。反物(たんもの)とは、着物などを作るために使われる布のことですが、これを風呂敷として使用するようになった背景には、当時の日本の織物技術や文化、経済状況が大きく関わっています。

 

反物の役割と風呂敷の登場

風呂敷が登場した当初は、風呂敷用の布が別途作られていたわけではありませんでした。むしろ、家庭にあった着物用の反物や、着物を解いた後に残った布を再利用して風呂敷を作ることが一般的でした。反物は元々、着物を作るために織られた布で、一定の幅と長さに仕立てられていました。風呂敷は、古くなった着物から作られることが多く、主婦が家庭での手仕事として制作するのが基本でした。当時の使用方法としては、日常生活での荷物の運搬や、贈り物の包み、衣服の保管など、風呂敷は多目的に使われていました。江戸時代には、庶民の間でも服装が日常的に華やかになり、また贈り物や日常の荷物の包み方が重要視されるようになります。風呂敷はその多様な用途から、特に贈り物を包むために使われるようになり、商人たちが仕事の際に物を包むためにも使用していたのです。風呂敷がもともとは着物から生まれていたように、日本の伝統的な「再利用」の文化が、風呂敷にも深く根付いていたと言えるでしょう。

 

 

着物(反物)をつなげて作る背景

風呂敷が反物をつなげて作られるようになった理由のひとつに、着物の反物自体の寸法があります。当時、女性が機織りで反物を織っていたのですが、その幅は、女性の腰幅である約36㎝くらいでしたが、これは風呂敷としては小さすぎるため、それを横につなぎ合わせて端を縫い、約70cm,約100cm,約140cm…という風に風呂敷の大きさは決められていきました。複数の反物をつなげて風呂敷としてのサイズを調整していたのです。これは、当時の商人たちが効率的に布を活用し、無駄を省いていた証拠でもあります。また、風呂敷を使う場面では、物の大きさや形状によって包む方法が異なるため、さまざまなサイズの風呂敷が求められました。そのため、いくつかの反物をつなげることで、より大きな風呂敷を作り出すことが可能となり、実用的で便利なアイテムとしての風呂敷が普及しました。

 

 

つなげる技術とデザイン

反物をつなげて風呂敷を作るためには、布を裁断し、縫い合わせる技術が必要でした。このため、職人の手によって丁寧に作られる風呂敷には、非常に高い技術と美意識が求められました。縫い目が目立たず、布の重なり部分がスムーズに仕上がるように、精緻な作業が行われたのです。

また、風呂敷のデザインにおいても、反物の柄をそのまま生かしたり、つなげた部分をアクセントとして使うなど、デザインに工夫が施されました。特に江戸時代には、風呂敷の柄が個性を表す一つの手段として使われ、家紋や花柄、季節の模様などが描かれました。反物の柄をつなげることにより、異なる模様の風呂敷が生まれ、個性的で美しい風呂敷が作られたのです。

 

 

反物をつなげた風呂敷の役割

風呂敷が反物をつなげて作られた時代には、特に贈り物や重要な物を包むために使われることが多かったです。例えば、出産や結婚祝い、または商売繁盛の祈願など、祝賀の意味が込められたギフトとして、反物をつなげた大きな風呂敷で包まれることがありました。さらに、日常生活でも商人や武士が自分の持ち物を包んで持ち歩くために使うなど、非常に多目的に活躍していました。

また、反物を再利用して作られる風呂敷は、物の大きさや形状に合わせて作られるため、使う人にとって非常に便利なアイテムとなり、その実用性が多くの人々に支持されました。

 

 

現在における影響

昭和30年代以降、日本は高度経済成長期に突入し、工業化が進みます。この時期、布製品の生産技術も大きく向上しました。それまでは職人が手作業で製作していた風呂敷も、工業用織機の導入により大量生産が可能となりました。特に、木綿やレーヨンなど手頃な価格の素材が多く使用されるようになり、家庭でも手に取りやすい価格の風呂敷が広がりました。現代では、風呂敷は単に物を包むための道具だけでなく、エコバッグやインテリアとしても使用されています。反物をつなげて作るという伝統は今では少なくなっていますが、風呂敷には今なお日本の文化や歴史が息づいています。また、再利用やリサイクルの観点からも風呂敷は注目され、現代のエコライフやサステナブルな生活に適したアイテムとして再評価されています。

 

(現代の量産される風呂敷と背景についてはまた記事にしますね。)

 

 

終わりに

風呂敷が反物をつなげて作られた歴史には、日本の「無駄を省く文化」や「美意識」が表れています。着物を解いて再利用し、必要な形に合わせて作られる風呂敷は、単なる実用的な道具ではなく、生活の中で大切にされてきた日本の美しさを象徴しています。

 

by Furoshiki Mignon

 

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