Furoshiki Mignon

風呂敷にはタブーがある

 

 

 

風呂敷のタブーとは

風呂敷を扱う者として、ここだけは間違えられないというポイントがある。それは「縦結びにならないように」ということだ。しかし、知らない人も多く、風呂敷の販売者であっても縦結びの写真を掲載しているのをよく見かける。ここではどうして縦結びがタブーとされているのか、実用性に関してもお伝えできたらと思う。風呂敷を取り扱うものとしては、知っておくべきことである。

 

 

縦結びとは

ふろしきの角と角を普通に結んでください。そう言われたら、日本人はたいてい左右の角を2回結ぶ。
それは、こま結びや固結び、風呂敷では真結びと呼ばれる。ところがよく見ると、現代においては約半数が〔縦結び〕になっている。

画像
縦結び

結び目の元と角が平行になる真結びと違い、縦結びは垂直に交わる形状で、これはエプロンや靴ひもの蝶結びにも散見される。
いずれにしても、縦結びは修正すべき誤った結び方とされ、昔であれば、きものの着くずれ同様、街ゆくおばあちゃんから指摘を受けて修正される案件だ。

 

 

縦結びはお葬式に使う結び

縦結びは亡くなった方の着る死装束のひもの結び方であるが、それがタブーの根拠ではない。真結びは、この世における実用的で機能的な理由から選ばれている。縦結びはこの世には存在理由がないため、死者に(もう自分はあの世の住人なのだ…)とさとらせ、成仏させるためのサインとなる。

 

 

正しい結び「真結び」と実用性

画像
真結び

では、なぜ真結びのほうが使いやすいのか。
真結びは角と元が平行であり、上から見ると一本に通って整っている。縦結びは角が元から90度ひらいているため、目に付くし、実際に周りへあちこちとぶつかりやすい。
結ぶ手順は、2回とも左右の同じ側の手を前にして結ぶと縦結びになる。これは、どちらかに偏ってバランスを崩している結果ともいえる。1回目と2回目で、左右の手の前後を変えるとプラスマイナスゼロの真結びとなり、角はそれぞれ、元来た方へと戻る。元から角へとUターンしているため、反対向きの形状が合わさり、構造として安定する。
その上、簡単なほどき方も存在し、使い勝手がよい。
縦結びは、Uターンまで至らずに90度のL字に過ぎないため、元を締めたときに抜けやすい。抜けずに締まっても、今度は固くなりすぎてほどくのが難儀となり、いずれにしても不安定で使いにくい。

 

 

使う人にとっていい方法を正しく学ぶ

以上のように、縦結びは縁起がわるいという見えない理由で避けられるのではなく、真結びのほうが使いやすいためにこの世的に選ばれている。大地に沿って水平な真結びに対し、縦結びは天上や地底といった黄泉の国を指している。たまには縦結びを見つめて、いずれは死にゆく有限の人生を想ってみるのもありだろう。ふろしきを使う際は、真結びになっているかご確認を。

 

written by Furoshiki Mignon

 

コメントは受け付けていません。